20代の頃、私はいつも“遅れないように”と焦っていました。
恋愛も仕事も、何かに追われるように「早く次のステージへ進まなきゃ」と思っていたのです。
でも30歳を過ぎてから、少しずつそのスピードを緩められるようになりました。
カナダでの暮らしを通して、年齢にとらわれずに生きる人々を見て感じたこと、そして今の私の心境を、今日は少しだけ書いてみたいと思います。
20代を振り返ってみて
24、25歳の頃、周りに結婚する人が増えはじめて、「まだ恋人もいないなんて、私大丈夫かな!?」と焦っていました。婚活パーティーに行ったり、マッチングアプリに登録したり、常に出会いを探していた気がします。今思うと信じられません(笑)。
20代後半になる頃には、「もう女性としての賞味期限が近づいてるんじゃないか」なんて本気で考えていました。「今のうちにいい人を見つけて結婚しなきゃ!」と。しかし今振り返ると、あの頃の私は何をそんなに急いでいたんだろうと思います。そもそも“女性としての賞味期限”って誰が決めたんでしょうね(笑)。
カナダで感じた、年齢に縛られない生き方
カナダに来て驚いたのは、人々が日本ほど年齢にとらわれていないということです。たとえば、カナダやアメリカでは履歴書に年齢を書く欄もなければ、初対面で年齢を聞かれることもありません。さらに英語には敬語の概念もないため、自然と年齢による上下関係が薄くなっています。
私の同僚たちは、上司に対しても思っていることをはっきりと伝えます。上下関係が強すぎると、お互いに遠慮が生まれ、ダイナミックな議論ができなくなってしまうような気がします。英語と日本語という言語の違いからも文化の違いを日々感じています。
日本では年齢のせいでチャンスを逃すこともあるけれど、カナダでは経験が重視されるので、結果として何歳からでも挑戦できる。学校に通い直す人も珍しくありません。このように、年齢を理由に自分を制限しない生き方を間近で見て、「なんて自由で柔軟なんだろう」と感動しました。
日本社会に感じること
これは、もはや文化や構造の違いなのかもしれません。海外では履歴書に年齢も性別も書かず、スキルや経験で評価されます。一方日本では、経験豊富なシニアよりも新卒が優遇されることも多く、「年齢」や「在籍年数」が重視されがちです。
もちろん、生涯雇用を前提とした社会構造にも理由はありますが、いろんな現場で経験を積んだ人の方が、柔軟な発想や実践的なスキルを持っているはずです。そうした人たちをもっと採用できれば、会社の成長にもつながると思うのですが、実際に上に立つのは“その会社のやり方”に長く従ってきた人たちばかりです。守ることは大事ですが、そればかりでは新しいアイデアや働き方は生まれません。
これは年齢の話から少し脱線したように見えますが、実は根っこが同じだと思います。年齢や立場という“枠”に縛られるほど、柔軟さや可能性は失われていくのかもしれません。
年齢に関係なく学び続ける人たち
私の友人のかほちゃんは、29歳でマッサージの学校に通い始めました。日本で言う整体師に近いような資格を取るためです。クラスメイトには40代で子どもがいる人もいれば、その一方で高校を出たばかりの10代もいたそうです。年齢や背景を超えて同じ目標に向かう関係、とても素敵だなと思いました。
以前同じ家に住んでいたルームメイトの女性は、ある日「彼氏ができたの!」と嬉しそうに報告してくれました。しばらくして結婚して家を出ていきました。私は彼女は30代後半くらいか、40代に差し掛かるかくらいだと思っていたのですが、後から別のルームメイトに聞いたところ、その彼女は52歳で、お相手は56歳でお孫さんがいる方だったそうです。 ……その話を聞いた瞬間、思わず「運命って年齢を選ばないんだな」と心の底から思いました。
30代になって、ようやく落ち着いた心
30歳を迎えたとき、正直少し焦りがありました。20代が終わってしまうことへの寂しさもありました。しかし今では、“30代”という響きに不思議な安心感を覚えます。
私は子どもの頃から茶道を習っていましたが、茶道は大人になってから始める人も多く、周りは歳上ばかりです。20歳を過ぎてもなお、「まだ若いから」などと言う言葉で締めくくられ、線引をされているような気持ちになることも多かったです。ところが30代になると、少しずつ言葉に説得力が出てきて、年上の方々も真剣に話を聞いてくださるようになった気がします。「まだ若いから」などと言われても、「そんなに若くないんですよ〜。」と少し冗談ぽく返せるようになりました。(笑)
そして何より、歳を重ねることが怖くなくなりました。焦りが減って、日々のことを淡々とこなせるようになりました。それが心の安定につながっているように思います。もし日本で同じように働いていたら、この感覚は得られなかったかもしれません。
おわりに:年齢は「制限」ではなく「色」
30代になって感じるのは、年齢って「制限」ではなく、「その人の色」なんだということです。 20代の頃の焦りも、30代での穏やかさも、どちらも自分を形づくる大切な要素。 焦っていた自分がいたからこそ、今の落ち着きがあるのかもしれません。
だから今は、“何歳だから”という理由で何かを諦めるよりも、 “何歳になったからこそできること”を楽しみたいと思っています。
それに──もしまた焦りそうになっても、あの52歳のルームメイトの笑顔を思い出せば大丈夫。 人生のタイミングなんて、案外こっちが決めるものじゃないのかもしれませんね。


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