役割を与えられると人は変わる|CESで見た日本企業とスタートアップの働き方

文化と気づき

人は「役割」を与えられると、その役割の人間になります。

普段はリーダーとして活躍している人でも、「メンバー」という役割を与えられると、自然とその役割の中で動くようになります。

先日、ラスベガスで行われたCESというテクノロジーカンファレンスで、私はその様子を目の前で見ることになりました。

そこで感じたのは、人の能力よりもむしろ、「役割」というものが人の行動を大きく決めているのではないか、ということでした。

CES 2026 Las Vegas technology conference hall from outside

人は役割を与えられた瞬間、その役割になりきり、その役割を全うしようとします。

先日、ラスベガスで行われた CES(Consumer Electronics Show) という大きいテクノロジー系のカンファレンスに行ってきました。

日本で勤めていた会社の元上司がCESを見に行くということで、カナダのバンクーバーに住んでいる私を、「ラスベガスからそんなに遠くないし、通訳もしてほしい」という理由で誘ってくれたのです。

もう会社を辞めて5年以上経ちますが、今でも私のことを覚えていてくれて、こうしてたまに連絡をくれる人とのつながりには本当に感謝しています。

今回、日本からCESに参加したメンバーは、その元上司を含めて全部で10人。

しかも全員、部長以上クラスの役職を持つ人たちでした。

私が会社を辞めた頃は、まだ役職など何もついていない下っ端社員。

大企業ということもあり、「部長以上」となると、まさに雲の上の存在のような人たちです。


CESで見た「役割」の面白さ

CESには2日間参加したのですが、12人の大所帯だったため、私たちは 6人ずつの2グループに分かれてブースを見て回ることになりました。

人でごった返す会場でしたが、奇跡的に誰もはぐれることなく、無事に2日間を終えることができました。

さすが日本の大企業。

「何時にどこを見るか」まで、しっかりと計画が立てられていました。

各グループにはきちんと リーダー役 がいて、

  • 全員揃っているか確認する

  • 次にどこに進むのか決める

といったことを管理していました。

CES 2026 Las Vegas technology conference hall

ここで私は、少し面白いことに気づきました。

このグループにいた人たちは、普段は全員が部長クラスです。

つまり、普段はチームをまとめる側の人たちです。

ですが今回、**「リーダーではないメンバー」**という役割を与えられると、

  • リーダーの指示に従う

  • 地図やスケジュールは特に見ない

  • 言われた通りに動く

という感じで、自然とその役割の中で動いていました。

普段リーダーシップを取っている人たちでも、

違う役割を与えられると、その役割に自然と収まっていく。

人って面白いなと思いました。


私も役割に助けられていた

私もきっと、もし社員としてそのチームに参加していたら、

部長クラスの人たちの前で少し緊張してしまい、遠慮してしまい、普段のようにたくさん喋ることはできなかったかもしれません。

(私は常にとってもおしゃべりです。笑)

でも今回は、通訳のような立場で参加させてもらったので、役職などは全く気にせず、普段通りに皆さんと楽しく話すことができました。

これもまた、ある意味で **「役割のおかげ」**だったのかもしれません。

 Displayed Robot from CES in 2026 


Downton Abbeyの世界

最近、Netflixで Downton Abbey というドラマを見始めました。

19世紀頃のイギリスの貴族の屋敷が舞台で、屋敷に住む家族と、執事やメイドたちとの人間関係を描いたドラマです。

この物語では、役割がとてもはっきりしています。

  • 主人は仕事をしない

  • 執事が服を用意する

  • メイドが部屋を整える

屋敷に住む人たちは、自分で上着を脱ぐこともなければ、自分でカフスを選ぶこともありません。

紅茶が飲みたいと言えば、紅茶が運ばれてくる。

ベッドシーツを自分で変えることもありません。

なぜなら、それは 彼らの役割ではないからです。


日本企業で働いていた頃

Downton Abbeyを見ていて、なんだか日本社会にも少し似ているなと思いました。

日本では、役割や上下関係がとても重要視されます。

私が日本で働いていた頃は、

  • 毎日1〜2時間の朝会

  • 議事録を取る

  • 夜11時に100以上あるチェックリストにチェックをつける

そんな働き方をしていました。

眠い頭で、ただチェックをつけていく作業。
そのとき私はよく思っていました。

「これって本当に意味があるんだろう?」

でもそれがルールだったので、疑問を持ちながらもただやるしかありませんでした。
何か問題が起きると 反省文やこの問題を防ぐための対策を書く

そしてチェックリストがまた増える。
今思うと、ちょっと笑ってしまうくらい、アホみたいな仕組みだったなと思います。


スタートアップでの働き方

現在私は、社員が20人もいない小さなスタートアップ企業で働いています。
ここでは役割がかなり曖昧です。

テスターチームがいないため、

  • エンジニア

  • オペレーション

  • ビジネスチーム

みんなで製品のテストをしています。

そんな中で、ある日セールスの同僚が言いました。
「まだバグが残っている。テスターチームは何をやっているんだ?」

するとビジネスマネージャーがこう言いました。
「うちにテスターチームなんてない。セールスのお前もテストするべきじゃないか?」

すると彼はこう言いました。
「それは自分の仕事じゃない。」

その瞬間、私は正直に思ってしまいました。
「ああ、この人はスタートアップには向いていないのかもしれないな。」

このセールスの同僚は、まもなくして会社を去っていきました。


役割を超えて働くということ

私は、役割を超えて仕事をするスタートアップの働き方が結構好きです。

その方が

  • 自分で考えることが増える

  • 作業だけの仕事にならない

  • クリエイティブな仕事ができる

からです。

もちろん会社のビジョンを実現することが大前提ですが、もし何かおかしいと思うことがあれば、部下の私たちでも発言できます。

むしろ発言しないと、何も考えていない人だと思われてしまいます。


役割は人をつくる

役割にはまること。

役割を与えられること。

それはある意味、人生を イージーモードにする方法でもあります。

「ここまでが自分の仕事」

そう決められている方が、楽だからです。

でもCESで見た部長たちも、Downton Abbeyの執事たちも、日本企業の社員たちも、みんな与えられた役割を見事にこなしていました。

そして私は最近、こう思うようになりました。

人は役割を与えられると、その役割になってしまう。

だからこそ、

どんな役割を引き受けるのか。

そして、ときにはその役割を超えるのか。

それを決めるのは、結局 自分自身なのかもしれません。

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